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俳優の中村雅俊さん=2025年3月18日午後0時29分、京都市右京区、筋野健太撮影
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 大型連休を中心に開かれる春の「京都非公開文化財特別公開」。今年は京都市と京都府八幡市の計16カ所だ。26日からの開催を前に、テレビ番組「あなたの知らない京都旅~1200年の物語~」に出演する俳優・歌手の中村雅俊さんに、京都の思い出や特別公開のお薦めの見方について聞いた。

慶大OBで日本史が得意な中村さん。歴史の宝庫・京都を旅すると、いつも新たな発見があるそうです。インタビューに出てくる下鴨神社と東寺五重塔の特別公開は4/26~5/6。

「海育ち」に鴨川は心地いい

 1974年に日本テレビのドラマ「われら青春!」でデビューして、昨年50周年を迎えました。

 当時の撮影はほとんどが東京で、俺が初めて京都に行ったのは83年です。時代劇の「必殺シリーズ」の「必殺渡し人」(朝日放送)の主演で、京都撮影所で撮りました。「必殺仕事人」の藤田まことさんが別の仕事をする1クール(3カ月)。当時30代でしたが、東京で撮る別のドラマと掛け持ちしていたので忙しくて、京都の寺めぐりもできなかったなあ。

 その後、福沢諭吉や徳川吉宗を演じた時代劇も京都で撮ったけど、観光よりも仕事でしたね。

 20年ほど前ですが、ドラマの撮影がない午前中、下鴨神社をよく散歩したことを覚えています。長い参道をどんつきの楼門まで行って戻ってくるんです。糺(ただす)の森を出た「鴨川デルタ」(賀茂川と高野川の合流点)で座って、事前に買っておいたおやつを食べました。

 俺は宮城県女川(おながわ)町という「海育ち」で、潮騒の音を聞いて育ちました。鴨川ではそんな音は聞こえませんが、視覚的な水の流れや落ち着いた雰囲気が心地いいんですね。

参拝前の予習で、より深く知る

 京都をゆっくり回れるようになったのはここ数年。京都の旅番組に出演するようになってからかな。2年前に始まった「あなたの知らない京都旅」でも、たくさんの寺社を訪ねました。京都は食べ物から着る物、湧き水に至るまですごく魅力があります。ドラマの撮影絡みではない京都旅は、とても楽しいんです。

 実は、日本史は高校時代から得意で、詳しいつもりでした。受験生のバイブルだった山川出版社の用語集を2冊買って、片方の用語を全部油性ペンで消して、ほとんど覚えたんですよ。でも、京都を旅すると、その知識が表面だけだったことに気づかされるんです。お寺や神社が存在する意味とか、歴史の裏側とか、学校で習う日本史と京都で学ぶ日本史は少々異なるわけです。番組では毎回、様々な角度から説明を聞いて、目を丸くしています。

 例えば、清水寺。今も観光客が多いですが、実は江戸時代からすでに人気だったそうです。旅行会社や団体ツアーのようなものがあって、寺そのものが京都にお客さんを呼ぶための「舞台装置」だったんです。そして、清水の舞台は何のためにあったのかといえば、踊るためなんです。疫病や災害が来ないよう、ご本尊の観音様に芸能を奉納していたそうです。

 東寺では、五重塔の中に入る機会がありました。たくさんの仏像がいらっしゃるのですが、その時思ったのは、事前に知識を持って見るべきだということ。知識がないと印象だけなんだけど、予習していくと歴史的な背景や仏師のことなど、さらに深く知ることができるんですよ。

 今ではお寺に行ったら、天井を見上げます。すると、あるお堂には竜が描かれている。1匹、2匹、雲の合間に。そんなことを意識するようになりました。

人生の秋を迎えると・・・

 番組の撮影で寺社を訪れると、修理が大変だという話をよく聞きます。国宝や重要文化財だと勝手にできませんし、専門家が確実に修理するとなると費用もかかります。参拝者が大勢くるならいいですが、そうでなければ資金は大きな問題です。京都の町なかから外れると、観光客もほとんど来ません。

 かつては時の権力者による寄付や改修が盛んに行われたようですね。天皇や貴族、平家に始まり、足利義満、豊臣秀吉、徳川家康などです。でも、今はそういう時代じゃない。ならば、どうやって維持していくのか。厳しい現実がありそうですね。

 この「特別公開」では、拝観料が文化財の保存や修理に生かされる。いい取り組みだと思います。

 特別公開される寺社は多いけど、たくさん行くよりも、いくつかに絞って事前に調べてから訪ねるのがいいんじゃないかな。番組の撮影でもそうだけど、現地で解説を聞く時、事前に勉強しておくと話が発展するからね。

 コンサートは1500回を超え、連続ドラマの主役は34本。この世界で50年以上仕事をしてきたわけですが、最近、人生には春夏秋冬といった季節のようなものがあると感じます。俺の場合は長い夏が過ぎ、いまは葉も色付いてきた初秋かな。

 人生がそういう季節になると、京都にはまるんですよ。東福寺の赤く染まった紅葉をみたら、思わずため息がでるからね。若い頃の自分には余裕がなかったけど、今の俺はそう感じるんだよな。

 なかむら・まさとし 1951年、宮城県女川町生まれ。慶応大卒。代表的なドラマは「われら青春!」「俺たちの旅」「ゆうひが丘の総理大臣」、映画は「夜逃げ屋本舗」など。歌手としても「ふれあい」「心の色」「恋人も濡(ぬ)れる街角」などがヒットした。

 テレビ番組「あなたの知らない京都旅~1200年の物語~」(BS朝日)は毎週木曜夜9時に放送中。中村さん出演予定の24日は、東映太秦(うずまさ)映画村や思い出の地を訪ねる。

上賀茂・下鴨両神社の神職が語るイベント、23日開催

 京都非公開文化財特別公開を前に、トークイベント「葵(あおい)がむすぶ 上賀茂神社と下鴨神社 春の特別公開に寄せて」(朝日新聞社など主催)を開催します。公開に参加する上賀茂神社と下鴨神社から神職を招き、由緒や葵祭、「相手の気になるところ」など、記者を交えて幅広いテーマで語り合うほか、今回の見どころもご紹介します。

◇23日[水]午後3時~4時半、大阪・中之島の朝日新聞大阪本社アサコムホール。オンライン講座併設。会員・一般とも2千円(会場参加者は特別公開の招待券1枚付き)。申し込みは朝日カルチャーセンターのホームページ(https://www.asahiculture.com別ウインドウで開きます)。問い合わせは同中之島教室(06・6222・5222)

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春の「京都非公開文化財特別公開」の案内

【期間】

 4月26日~5月11日

【拝観受付時間】

 午前9時~午後4時

 ※東寺は午前8時~午後4時半

【拝観料】

 (1カ所につき)大人1千円、中高生500円

 ※東寺五重塔は大人1200円、高校生700円、中学生以下500円

 ※朝日友の会会員は拝観料割引の特典あり

【主催】

・京都古文化保存協会

 Tel 075・451・3313

 https://www.kobunka.com/別ウインドウで開きます

・公開寺社など

【各種ご案内】

 朝日新聞デジタル版・特集ページ

 http://t.asahi.com/n1ir別ウインドウで開きます

◇公開が延期・中止されたり、公開場所や日程・時間などが変更されたりする場合があります。ご来場の際は京都古文化保存協会のホームページや公式X(旧ツイッター、@kyoto_kobunka)で最新情報をご確認ください。

◇特別公開拝観者を対象にした関連講演会の情報は、京都古文化保存協会のホームページでご確認下さい。

京都市と京都府八幡市の計16カ所で

上賀茂神社  4/26~5/6(4/29・5/4午前、5/1・5終日の拝観休止)

梅辻家住宅  4/29~5/11

伝統文化保存協会  4/26~5/11(光照院門跡常磐会館にて開催)

下鴨神社  4/26~5/6

金戒光明寺 山門  4/26~5/11

知恩院 大方丈・小方丈・方丈庭園  4/29~5/11

隨心院  4/26~5/11

伏見稲荷大社  4/26~5/11

大雲寺  5/1~11

円妙院  5/1~11

安楽寿院  4/26~5/11

北向山不動院  4/26~5/11

長建寺  4/26~5/11

東寺 五重塔  4/26~5/6

石清水八幡宮  4/26~5/11

松花堂庭園・美術館  4/26~5/11(4/28・5/7は拝観休止)

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